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会期: | 2013年2月9日(土)~3月24日(日) |
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謄写版の冒険 卓上印刷器からはじまったアート
Mimeograph: Artistic Exploration of Printing Machine
『謄写印刷器』制作年不詳、個人蔵
戦前・戦後を通して、手軽な印刷術として親しまれた謄写版(とうしゃばん)。その謄写版によって表現意欲に目覚め、美を求めて、技術を芸術にまで高めようとした人々の活動を追います。
古典的な印刷術の3つの版式、凸版(とっぱん)、凹版(おうはん)、平版(へいはん)は今日もなお美術の分野で木版画、エッチングなどの銅版画、リトグラフとしてそれぞれ生き続けています。しかし謄写版は、コピー機、ワード・プロセッサー、パーソナル・コンピューターなどの発展によって印刷技術としての役割を終えるとともに、版画をはじめ創造的な表現の分野での業績も忘れられつつあります。それは、作品の作り手が、同時に産業としての謄写版印刷の担い手であったためかもしれません。
本展は、この謄写版印刷が存在し、最も個人に身近な印刷術として、近代の出版、表現活動に貢献した事実を見直し、挿絵や図案からはじまった版画の試み、魅力的な文字デザインなど、時代を超えて評価されるべき創造的な側面を再発見しようとするものです。
主な出品作品は、和歌山市で謄写印刷工房「蝸牛工房(かぎゅうこうぼう)」を営むかたわら版画の制作を続け、日本版画協会展や国画会展で活躍した清水武次郎(しみずたけじろう 1915-1993)ほか、謄写版によって独自の作品世界を創造した福井良之助(ふくいりょうのすけ 1923-1986)、謄写版による創作版画を提唱した若山八十氏(わかやまやそうじ 1903-1983)らの孔版画です。さらに、若山を中心に集まった「甃土会(しゅうどかい)」「点の会」の作家たちをはじめとする謄写版画家たちの作品を加え、謄写版から発展した孔版画の魅力を普及しようとした活動の広がりを示します。そして、これらの作品に並行して、各地で謄写版印刷工房を開いて地方文化の創造をめざしつつ、謄写版誌の刊行などを通じて各地の作家とつながりを作り、制作を続けた無数の人々の活動を示す資料をあわせ、知られざる日本近代版画史を検証します。
60作家472点 ほか資料類を展示。
【会期中のイベント】
○講演会「謄写版の魅力ーものとひとと」講師 植野比佐見(当館学芸員)
2月17日(日) 14:00~15:30 当館2階ホール(13:30開場、先着120名)
○ワークショップ「はじめての謄写版」講師 坂本秀童子(坂本謄写堂主宰)
3月16日(土)ワークショップ第1回 13:00~16:00
3月17日(日)ワークショップ第2回 10:00~13:00
*1回15名、事前に申し込みが必要です。当館にお問い合わせください。
2月24日(日)、3月3日(日)、3月10日(日) 14:00~15:00
【開館時間】 9時30分~17時00分(入場は16時30分まで)
【休館日】 月曜日(ただし2月11日は開館、翌2月12日休館)
【観覧料】 一般500(400)円、大学生300(250)円 ( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障害者の方、県内に在学中の外国人留学生は無料
【助成】公益財団法人 花王 芸術・科学財団
平成24年度 文化庁 地域発・文化芸術創造発信イニチアシブ

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1. 板東俘虜収容所『音楽会プログラム「歌曲の夕べ」』1918年、謄写版・紙 山形謄写印刷資料館蔵
2. 日本謄写芸術院『謄写印刷資料集』1931年、謄写版・紙 山形謄写印刷資料館蔵
3. 岩根豊秀『ポスター「金亀食堂」』1932年、謄写版・紙 株式会社サンライズ出版蔵
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4. 若山八十氏《萌》1977年、孔版・紙 当館蔵
5. 若山八十氏《風》1975年、孔版・紙 当館蔵
6. 清水武次郎《[作品]》1956年、孔版・紙 当館蔵
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7. 清水武次郎《考える鳥》1959年頃、孔版、紙 当館蔵
8. 本間吉郎《江東新橋遠望》1976年、謄写版、紙 個人蔵
9. 森田睦《帆船の構図 No.3》1970年頃、孔版・紙 個人蔵
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10. 松岡敏行《トレド》1969年、孔版・紙 個人蔵
11. 嘉部弘《狂想曲第3番》1970年、孔版・紙 当館蔵
