1.「和歌山ー日本」展 〜10月20日まで!

「近代」展示風景
「近代」展示風景

開催中の「和歌山ー日本」、もうご覧いただけましたか。 全国で5番目に開館した近代美術館として、また和歌山ゆかりの作家を中心に近代美術の検証を行ってきた美術館として、 大きく5つの章に分けてそのコレクションをご紹介しています。 それは結果として、当館のコレクションハイライトとしても、お楽しみいただける内容になっています。

前号でも予告しましたが、会場入口には「近代」という「文字」が掲げられています。 これは兵庫県立美術館が、「近代美術館」であった時代の外壁看板文字です。 近代美術とはなんなのか、平成も終わりに近づいた今、近代とは何を指す言葉なのか。 かたちのない概念が、実体を伴った文字として目に飛び込むことで、大きな印象を与えます。 その様は、まるでコンセプチュアルアートのようです。

また、作品保存の観点から展示期間に制限がある版画作品も、 当館が誇るコレクションの軸としてご紹介しています。 ディープなファンが多い田中恭吉や『月映』は、 次の展示予定が未定となっています。この機会をぜひ、お見逃しなく!

明日10月8日には、解説型のフロアレクチャーとは違い、 参加者のみなさんと学芸員が一緒にお話をしながら作品を楽しむ「だれでも美術館部」を開催します。 夏の「なつやすみの美術館」展でも好評だったこの鑑賞会、 今後も継続していく予定ですので、お気軽にご参加ください。

【会期】~10月20日(土)
【会場】2階展示室
【関連事業】
 ◎フロアレクチャー(館長による展示解説)
  10月20日(土)14:00から
  展示室にて(要観覧券)
 ◎だれでも美術館部(みんなでお話をしながら作品を楽しむ鑑賞会)
  10月8日(月・祝)
  14:00から展示室にて(要観覧券)
 ◎こども美術館部(小学生対象の鑑賞会)
 「つなひきだいさくせん」
  10月13日(土)11:00から(要観覧券)
  *開始時刻までに受付をお済ませください。
  *小学生は無料にて観覧券をお渡しします
 ◎上映会+シンポジウム「近代の文化遺産を守るー寂光院とその襖絵を中心にー」
  詳細次項

> 和歌山―日本 和歌山を見つめ、日本の美術、そして近代美術館を見つめる

2.寂光院緊急調査 上映会+シンポジウム 〜延期開催決定

黒住章堂《竹虎図》1935年 寂光院蔵
黒住章堂《孔雀牡丹図》1935年 寂光院蔵

台風24号の接近により、和歌山県をはじめ多くの地域で停電が発生したようですが、 被害にあわれた方々にお見舞いを申し上げます。当館も9月30日は臨時休館いたしました。 そして予定していたシンポジウム「近代の文化遺産を守るー寂光院とその襖絵を中心にー」はやむなく開催を見送りました。 10月14日(日)にあらためて開催することになりましたので、多くの方のご参加をお待ちしております。 以下、前号に重ねてのご案内です。

昨年度、和歌山市内にある寺院、寂光院の庫裏(くり)の解体に伴い、 和歌山市内の文化財関係者が連携して緊急調査を行いました。 それによって明らかになった襖絵を、「和歌山ー日本」展でも公開します。 この調査については、当館『NEWS』93号の中で、藤本学芸員が報告をしています。

本展の関連事業として、調査により明らかになった建築や襖絵などについて紹介するとともに、記録映像を上映します。 さらに文化財を守ることをテーマにシンポジウムを行います。

 ◎上映会+シンポジウム「近代の文化遺産を守るー寂光院とその襖絵を中心にー」
  10月14日(日)14:00から16:30
  和歌山県立近代美術館 2階ホールにて(参加無料)
  協力:和歌山県立博物館、和歌山市立博物館
  パネリスト:
    近藤壮(和歌山市立博物館館長)
    中西重裕(建築家・和歌山県ヘリテージマネージャー)
    藤本真名美(和歌山県立近代美術館学芸員)
    前田正明(和歌山県立博物館主任学芸員)
    御船達雄(和歌山県教育庁文化遺産課主査)

3.鈴木昭男 ― 内 在 ― 展

〜熊野古道なかへち美術館にて明日より開催

桜画廊(名古屋)でのパフォーマンス 1985頃
スペース桐里でのパフォーマンス 1982年
photo: Akira KINOSHITA

現在のコレクション展では、「鈴木昭男 音と場の探究」を開催しています。 同じ和歌山県は田辺市中辺路町にある熊野古道なかへち美術館でも、 明日より、「鈴木昭男 ― 内 在 ―」展がオープンしました。

当館の展示では、作家のこれまでの活動を振り返る内容となっていますが、 熊野古道なかへち美術館では、「音の内在」をテーマにした新作が美術館の内外に設置されます。 作家の最新の表現によって、あらためて熊野古道なかへち美術館、 そして美術館の存する環境について再考、再認識することを目指した展示です。 和歌山市からは少し遠いですが、過ごしやすい季節となった今、中辺路までお出かけください。 道中は美しく色づく山々が楽しめることでしょう。

また、当館での展示最終日となる10月21日には、 鈴木昭男氏ご本人と、中川真氏(大阪市立大学特任教授)をゲストに迎えたギャラリートークとパフォーマンスを開催することになりました。 開会初日に繰り広げられた、音と戯れるような興味深いパフォーマンスが、 今一度見られることを、期待しています。

【熊野古道なかへち美術館】
【会期】10月6日[土]-11月25日[日]
【関連事業】
 ◎オープニングパフォーマンス 鈴木昭男 な げ か け ― na ge ka ke ―
  10月6日(土)
  午後6時から 熊野古道なかへち美術館交流スペースにて
  要予約先着順・無料 定員 40名 小学生以上
  〔予約・問合わせ〕田辺市立美術館 0739-24-3770
 ◎クロージングパフォーマンス 鈴木昭男×宮北裕美(ダンサー/アーティスト) た ど り ―ta do ri―
  11月25日(日)
  午後2時から 熊野古道なかへち美術館交流スペースほかにて
  要観覧券・申込不要

【和歌山県立近代美術館】
【会期】~10月21日(日)
【会場】1階展示室
【関連事業】
 ◎鈴木昭男展 ギャラリートーク/ゲスト:鈴木昭男、中川真(大阪市立大学特任教授)、鈴木昭男パフォーマンス
  10月21日(日)
  14:00から展示室にて(要観覧券)

> 熊野古道なかへち美術館 開館20周年記念特別展 鈴木昭男 ― 内 在 ―

> 「鈴木昭男 音と場の探究」

4.当館の創作版画コレクションが岡山で見られます

山本鼎《漁夫》1904年
山本鼎《漁夫》1904年

日本の版画と言えば、海外からは浮世絵が注目を集め、特に19〜20世紀初頭のヨーロッパの美術に大きな影響を及ぼしてきました。 しかし近代以降の日本においては、反対に西洋からの影響を受け、 「自画・自刻・自摺」つまり自分で絵を描き、自分で版木を彫って、自分で摺る版画が美術表現として確立していきます。 こういった版画はそれまでの職人による分業体制で制作される浮世絵と区別して、「創作版画」と呼ばれました。

そして、全国屈指の版画コレクションを誇る当館の創作版画コレクションは、質と量ともに群を抜いています。 このコレクションを中心にした展覧会が、岡山県立近代美術館で開会しました。 開会初日には、当館学芸課長の井上芳子が、記念講演会にてお話をいたしました。

この展覧会では、当館のコレクションに加えて、岡山県立美術館が収蔵する棟方志功と森谷南人子の作品も出品され、 郷土ゆかりの作家の活動もふまえながら、近代日本に花開いた創作版画が幅広く紹介されます。

さらに西に1時間ほど行った笠岡市立竹喬美術館では、「創立100周年記念 国画創作協会の全貌展」が開催中です。 11月3日から当館に巡回しますが、展示作品には違いもありますので、 この秋、岡山にお運びの際は、ぜひ2館あわせての観覧をおすすめします!

> 岡山県立美術館

> 笠岡市立竹喬美術館

5.『NEWS』96号を発行しました

『NEWS』96号

年に4回発行している当館の機関誌『NEWS』96号をウェブでも公開しました。
今号の内容は、

タイムトラベル(奥村泰彦)
未来の地球はどうなっているだろう ワークショップ「2000年後の和歌山を発掘しよう!(青木加苗)
庭園の眺め 高橋力雄の木版画(井上芳子)
若者たちの覚醒するとき(藤本真名美)
「保存」の話をしよう。6.謎のめじるし「結界」(植野比佐見)

となっています。

ひとつめの「タイムトラベル」は、「なつやすみの美術館8 タイムトラベル」展の企画者が、その内容を振り返りながら、 着想源として抱いていたタイムトラベルのイメージを振り返ります。 また「未来の地球はどうなっているだろう」では、同展の関連事業として開催したワークショップの内容をご報告しています。
「庭園の眺め」は、この春に開催した特集展示より、作家の造形観をその背景とともにご紹介しています。
「若者たちの覚醒するとき」では、特集展示「院展の画家たちII 紅児会・赤曜会に集える俊英」と、 この秋の特別展「国画創作協会の全貌展」の作家たちが、いかに日本画の革新を目指し、信じる道を突き進んでいたかをお伝えしています。
もう6回目の連載となった「「保存」の話をしよう」は、展示室で見かけるあの「線」についてです。

展覧会だけではお伝えしきれないこと、また展覧会を終えてからあらためて振り返ること、 あるいは展示の主役にはならなくとも美術館の仕事として知って頂きたいことなどを、 担当者の生の声でお伝えするのが当館の機関誌『NEWS』です。 会場でも配布しておりますが、PDFでも公開しておりますので、一度ご覧ください。

> 和歌山県立近代美術館ニュースNo.96

6.貸出中の当館コレクション ~あちらこちらで活躍中

当館コレクション(所蔵作品)は、全国各地の美術館で活躍しています。

「創立100周年記念 国画創作協会の全貌展」 チラシ
「創立100周年記念 国画創作協会の全貌展」 チラシ

◎「創立100周年記念 国画創作協会の全貌展」

笠岡市立竹喬美術館  2018年9月14日(金)~10月21日(日)

  • 杉田勇次郎《麓庵》1927年
  • 徳力富吉郎《人形》1927年
  • 野長瀬晩花《少女像(素描)》1923年
  • 野長瀬晩花《スペインの田舎の子供》1924年
  • 野長瀬晩花《田舎の舞妓(素描)》1925年
  •             以上5点
「阿部展也―あくなき越境者」展 チラシ
「阿部展也―あくなき越境者」展 チラシ

◎「阿部展也―あくなき越境者」

埼玉県立近代美術館  2018年9月15日(土)~11月4日(日)

  • 『フォトタイムス』1938年
  •             ほか同書籍資料全14点
「創作版画が歩んだ道のり 和歌山県立近代美術館コレクションを中心に」展 チラシ
「創作版画が歩んだ道のり 和歌山県立近代美術館コレクションを中心に」展 チラシ

◎「創作版画が歩んだ道のり 和歌山県立近代美術館コレクションを中心に」

岡山県立美術館  2018年10月5日(金)~11月4日(日)

  • 山本鼎《漁夫》1904年
  • 竹久夢二《得度の日》1912年
  • 藤森静雄《夜のうた》1914年
  • 岸田劉生《『白樺』第10年10月号表紙》1919年
  •             ほか、全145点

詳細は開催館にお問い合わせください。

7.おとなりの博物館

「西行 ―紀州に生まれ、紀州をめぐる―」展チラシ
「西行 ―紀州に生まれ、紀州をめぐる―」展チラシ

10月13日(土)より、特別展「西行 ―紀州に生まれ、紀州をめぐる―」が開会します。 これは平安時代の歌人西行が、元永元年(1118)紀伊国田中荘(和歌山県紀の川市)に生まれて 今年で900年となることを記念した展覧会です。
西行は当初、佐藤義清という名前で、京都で院北面の武士として活動していましたが、 あるとき世の無常を感じ、出家し西行と名乗ります。 その後、高野山・天野(高野町・かつらぎ町)で隠遁生活を送りつつ、 のちに全国に遊行の旅に出て、各地で歌を詠んでいます。 和歌山県内でも、千里の浜(みなべ町)や那智の滝(那智勝浦町)などを訪れ、多くの歌を残しています。
紀州が生んだ歌人西行にまつわる文化財を一堂に集め、紀伊国(和歌山県)に残した足跡とともに、西行の事績を振り返る展覧会です。

西行法師生誕900年記念 特別展「西行 ―紀州に生まれ、紀州をめぐる―」
【会期】10月13日(土)~11月25日(日)
【会場】和歌山県立博物館(近代美術館となり)
【入館料】一般1000(800)円、大学生800(600)円
   *( )内は20人以上の団体料金。
   *高校生以下・65歳以上・障害者は無料。
   *和歌山県内に在学中の外国人留学生は無料。
【主催】和歌山県立博物館・西行学会
【協力】弘川寺・西行記念館

【関連事業】
 ◎連続講座「西行 再発見!」
  10月20日(土)13:30〜15:00 「西行和歌の魅力」山口眞琴氏
  11月3日(土・祝)13:30〜15:00 「西行伝承のおもしろさ」松本孝三氏
  11月10日(土)13:30〜15:00 「『撰集抄』の中の紀州譚」礪波美和子氏
  11月17日(土)13:30〜15:30 「西行物語絵巻の世界を読む」
  阿部泰郎氏・蔡 佩青氏・近本謙介氏・橋本美香氏
  *いずれも和歌山県立近代美術館2階ホールにて、事前申込不要、参加費不要

 ◎西行学会大会
  10月27日(土)13:30〜16:30 
  記念講演 「西行と紀国、西行くさぐさの歌」久保田淳氏
  座談講演 「讃岐の西行ー佐佐木幸綱と語るー」
       佐佐木幸綱氏・小林幸夫氏・平田英夫氏
  10月28日(日)9:45〜16:45
   9:45〜16:45 研究発表
   13:00〜16:45 シンポジウム「紀伊半島と西行」
       宇津木言行氏・川崎剛志氏・坂本亮太

 ◎ミュージアムトーク(担当学芸員による展示解説)
  10月21日(日)10:30〜12:00
  11月23日(金・祝)13:30〜15:00
  11月24日(土)10:30〜12:00
  いずれも展示室にて(要観覧券)

> 和歌山県立博物館

 編集部より

先日、ドイツのとある美術館館長を和歌山にご案内しました。 当館ではちょうど「和歌山ー日本」展が開催中で、日本の近代美術をコレクションによって検証する展覧会をご覧いただき、 またおとなりの博物館では、貴重な仏像の彫刻を見られる機会でもありながら、文化財の盗難防止に取り組む博物館活動に触れる展示を、 さらに和歌山市立博物館では、紀州徳川家伝来の美術品と、日本の文化財保護の土台を築くことになる徳川頼倫(よりみち)が創設した、 我が国初の私設図書館「南葵(なんき)文庫」を紹介する展示(〜10月21日)を見ていただきました。
「和歌山はミュージアムの本質に関わる仕事をしているね」とのお言葉を頂きましたが、 この2週間あまりが、日本の美術館・博物館とはなにか、そして近代における日本の美術について多角的に見ることができる、 またとない機会だったことに気づいた次第です。
この博物館の展示は終わってしまいましたが、特別展が始まる10月13日から20日までの1週間は、 3館を巡って楽しめるチャンスが再来します![青木]

・・・美術館のつぶやきコーナー・・・

いよいよ始まった熊野古道なかへち美術館での鈴木昭男展。 作家によると、どうやら音のない作品の展示にとなっているとか。。 楽しみです。
[奥村一郎@鈴木昭男展]

いつも裏方(学芸員室)で働いている私ですが、時々展示室に出て、監視の仕事をお手伝いをすることがあります。 以前、後ろ側にいた来館者に気をつけていただくよう監視員が声をかけた場面を目にしました。 あとで「何故、後ろ向きなのにお客さんの動きが分かったんですか?」と質問したら 「少し危ないなと思う動きは、振り返らなくても音で分かるんです」との返答。お見事!プロだ!と思いました。
[稲田正子@学芸員室のつぶやき]

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