会期:2011年03月19日(土)~2011年06月12日(日)
吉田政次は1917(大正6)年、現在の有田川町に生まれた芸術家です。
1941(昭和16)年、吉田は東京美術学校(現在の東京藝術大学)を卒業しますが、間もなく始まった太平洋戦争に従軍。中国で負傷したため、日本に帰還できたのは1946(昭和21)年のことでした。画家として出発しようとした矢先に、5年という空白を余儀なくされたわけですが、それは単なる空白ではなく、殺伐として無秩序で、暴力に満ちたものでした。
戦後、再度芸術に取り組もうとした吉田が求めたのは、秩序ある、穏やかで平和な世界でした。作品としてそのような世界を実現するには、木版による抽象表現が適していることを見いだした吉田は、1948(昭和23)年頃から版画による制作を始めています。
緻密な技術に基づいた内省的な表現は、間もなく高く評価されることとなり、国内はもとより海外の展覧会にもしばしば出品されるようになっていきました。
《静》《相対性絵画》《空間》といったシリーズごとに新しい表現が追求されていますが、いずれにおいても、木版を切り抜いて作り出される表情に富んだ面や、細かく刻まれた平行線の塊が層を成す面によって、彼の求めた世界が実現されていると言うことができるでしょう。
旺盛な制作を続けていた吉田が癌にたおれてから、今年で40年になります。この機会に、吉田の求めた静かで秩序ある平和な作品の世界を見直したいと思います。
展覧会情報
会場 | 和歌山県立近代美術館 |
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会期 | 2011年03月19日(土)~2011年06月12日(日) |
開館時間 | 9時30分~17時00分(入場は16時30分まで) |
休館日 | 月曜日(3月21日[月・祝]は開館、翌22日[火]休館) |
観覧料 | 一般340(270)円、大学生230(180)円( )内は20名以上の団体料金 * 高校生以下、65歳以上、障害者の方、県内に在学中の外国人留学生(外国人就学生も含む)は無料 |
関連事業
フロアレクチャー(学芸員による展示解説)/鑑賞ワークショップなど開催予定
主な出品作品
吉田 政次《静 No.28》1953(昭和28)/木版、紙/33.2×24.3
吉田 政次《New Star No.1》1956(昭和31)/木版、紙/60.6×48.0
吉田 政次《相対性絵画 No.6》1959(昭和34)/木版、紙/155.3×155.4/個人蔵
吉田 政次《躍動する心 No.6》1968(昭和43)/木版、紙/86.1×71.5
吉田 政次《青春の輝き No.2》1969(昭和44)/木版、紙/86.8×72.0
展示替えを含めて約50点を展示予定