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コレクション展 2022-冬春 特集:若き日の野長瀬晩花

会期:2022年02月08日(火)~2022年04月17日(日)

コレクション展 2022-冬春 特集:若き日の野長瀬晩花 野長瀬晩花《舞妓図》 1916年 当館蔵

当館は 1963(昭和 38)年に開館した和歌山県立美術館を前身として、1970(昭和 45)年 11 月県民文化会 館内に開館し、明治時代以降の和歌山ゆかりの作家の紹介を中心に活動を続けてきました。1994(平成 6)年に 黒川紀章の設計による現在の建物でリニューアルオープンすると同時に、作品収集の範囲を国内外へ広げ、現在で は日本画、洋画、彫刻、版画など総数1万点を超える作品を所蔵するに至っています。 コレクション展では、幅広い美術の表現に接していただけるよう、季節ごとに展示を替え、和歌山ゆかりの作家を 中心に、さまざまな観点から所蔵作品の紹介を続けています。

和歌山県は、日本画、洋画、彫刻、版画等の各分野で活躍した個性豊かな人物を多数輩出しています。本展覧会では彼らの作品とともに、高井貞二や村井正誠ら本県とゆかりの深い作家や、佐伯祐三などの近代日本美術を代表する作家の作品も交えて、近現代の美術の流れをご覧いただけるよう構成しています。

特集展示では、本県に生まれ、1918(大正 7)年に京都で国画創作協会を創立し、斬新な日本画を発表した野長瀬晩花を紹介します。若き日の晩花が、当時京都の主流であった円山・四条派の写生を脱し、ポスト印象派等の影響下で先鋭化していく様子をご覧いただきます。

 

 

野長瀬晩花(のながせ ばんか)
1889(明治 22)年、現在の和歌山県田辺市中辺路町に生ま れる。大阪で中川蘆月に、京都で谷口香嶠に日本画を学ぶ。 京都市立絵画専門学校別科に入学するも、1911(明治 44)年 に中退。1913(大正 2)年に文部省美術展覧会(文展)の会場前に移動式テントを設置し秦テルヲとバンカ・テルヲ展を開催する など、テルヲや竹久夢二らと交遊しながら奇抜な作品を発表し、京都で異色の日本画家として知られた。1918(大正 7)年 には、小野竹喬や土田麦僊らと国画創作協会を創立し、団体の急先鋒として活動。ポスト印象派など最新の美術思潮を採り入れながら、斬新な日本画作品を多数発表した。

 

野長瀬晩花(1889〜1964)は、現在の和歌山県田辺市中辺路町に生まれ、1918(大正7)年、29歳のときに小野竹喬、土田麦僊、村上華岳、榊原紫峰と京都で美術団体の国画創作協会を創立したことで知られる日本画家です。

 晩花は14歳で和歌山を出て、大阪と京都で日本画を学びました。大阪で最初の師・中川蘆月に学んでいた頃の画稿類には、古画や絵手本の模写、草花・生き物・風景の写生など、のちの奔放な作風とは異なる堅実な学習ぶりがうかがえます。京都で2人目の師である谷口香嶠の画塾に所属した頃も、模写や写生等に取り組み、当時京都の主流であった円山・四条派の筆技をしっかり学び取っています。一方で、香嶠塾の頃のものと思われる写生帖には西洋人物の図なども散見され、徐々に西洋美術への傾倒も見せはじめます。

 1909(明治42)年には、開校まもない京都市立絵画専門学校(現在の京都市立芸術大学)に入学するも約2年で中退。その後、京都の新古美術品展覧会に出品した《被布着たる少女》によって、鮮烈なデビューを果たします。本作の実験的でモダンな表現は賛否を巻き起こし、当時、瀟洒な日本画が好まれた京都では理解されにくかったというエピソードも残っています。

 「ハイカラ」な晩花青年は、花街やカフェー、バーなどに繰り出し、遊蕩にふけりながら自由奔放な創作活動を展開しました。この時期に行われた移動式テントや、園芸店、遊興施設といった一風変わった場所での展示も、京都の人々には奇異に映ったことでしょう。大正初期頃には、習画期の筆遣いは影を潜め、ポスト印象派などの西洋美術に感化を受けながら、強い自意識の表れた作品を発表し、デモクラシーの空気の中で個性を開花させていきました。

 1917(大正6)年、晩花27歳の頃に雑誌へ投稿された「若きものは覚めよ」という文章では、若い画家たちに向けて「芸術家としてたつ若い男が先人の造つた道を手を懐にして黙つて歩いてゆくのは、あまりに卑怯だ狡猾だ盗棒だ」と呼びかけ、考えもなしに先達の真似をするのはいけないと訴えています。

 その翌年、彼は仲間とともに国画創作協会の創立に踏み切りました。先鋭的な晩花の存在は、国画創作協会創立会員の中でもひときわ異彩を放ち、ほかの会員たちが「優等生」とみなされたのに対して「放校処分でも受けそうな分子」と称されています。同会の解散にいたるまで、晩花は常に急先鋒として存在感を示し続けました。

 当館では、紀州育ちの異色画家・晩花の顕彰に努め、近年では没後50年を記念して2014(平成26)年に特集展示を開催、2018(平成30)年には特別展「国画創作協会の全貌展」を開催し、昨年の特別展「和歌山の近現代美術の精華」でも、晩花の代表作を紹介しました。今回は画業の初期にスポットライトを当て、円山・四条派の写生を脱して、ポスト印象派等の影響下で先鋭化していく様子を紹介し、近年収蔵された新出作品も交えながら改めてその魅力に迫ります。

展覧会情報

会場 和歌山県立近代美術館 1階展示室
会期 2022年02月08日(火)~2022年04月17日(日)
開館時間 9時30分−17時[入場は16時30分まで]
休館日 月曜日[ただし、3月21日は開館し、翌22日は休館]
観覧料 一般350(270)円、大学生240(180)円( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
*2月 26 日、3月 26 日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
*3月 6日、4 月 3日(毎月第 1 日曜日)は全館無料
主催 和歌山県立近代美術館

関連事業

フロアレクチャー(学芸員による展示解説)

日時:

36() →和歌山県内でのまん延防止等重点措置の延長を受けて、3月20日(日)へ延期します

4月3日(日)

両日とも 14時 から 1 時間程度、1階展示室にて

*観覧券が必要です。

*新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、予定が変更となる場合があります。

同時開催

企画展「20 世紀からおみやげ。近現代美術のたのしみ」  2月5日(土) ~ 3月27日(日)

同時期開催の野長瀬晩花関連展示

田辺市立美術館

「開館25周年記念コレクション展 日本画の革新 III/水彩画の展開 IV」 2月19日(土) ~ 3月27日(日)

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