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館長からのメッセージ/2011.4.24

桜の花も散り、いよいよ新緑がまぶしい季節となりました。皆様はお元気でお過ごしでしょうか。

東日本大震災で亡くなられた方々には深く哀悼の意を表します。そして、被災され、不安と緊張のなかで長期にわたって不自由な生活を強いられている方々には、1日でも早く心安らかな生活を取り戻せるように願わざるをえません。

このたびの震災では美術館・博物館、寺社、あるいは個人が所蔵する文化財も多数被災しました。絵画、彫刻はもとより、広く文化財は人間の精神の営みを伝えるものです。被災された方々の生活が少しずつ安定し、被災地がこれから復興に向かうなかで、文化財は人びとの心の支えとして、また地域の記憶をよみがえらせるかけがえのない財産として、重要な役割をはたすものと思います。当美術館も微力ではありますが、被災した美術館・博物館等への救援活動に参加しています。

美術館は一部の美術愛好家のためだけに存在しているのではありません。当館も社会の一員として、日々人びととともに呼吸する美術館でありたいと思います。

企画展「版画のアナ ガリ版がつなぐ孔版画の歴史」は4月17日に終了しました。ガリ版(謄写版)とシルクスクリーンは基本的には同じものであると理解こそしていましたが、あの素朴なガリ版からどうしてこれほど繊細な作品が生まれるのか、本当に驚きました。ガリ版を使ったことのある方々はこの展覧会でをご覧になって、きっと私と同じような感想を持たれたのではないかと思います。ガリ版による版画制作は戦後の一時期、日本各地で行われていましたが、和歌山で印刷業を営むかたわら版画制作に打ち込んだ清水武次郎(1915-1993)こそ、その代表的な作家であったことにも驚かされました。本展は、従来の版画史の本からもれていたガリ版による版画を紹介する、当館ならではのユニークで貴重な展覧会でした。会期が短かったことと、予算不足からカタログを作れなかったことを大変残念に思います。

「コレクション展2011-春」では、没後40年を記念して、海外でも評価の高かった有田川町出身の木版画家吉田政次(1917-1971)の回顧展示をしています。また、吉田の作品の題名≪青春の輝き≫にちなんで、芸術家たちが青年時代、おもに20代に制作した作品を紹介しています。23歳で夭折した田中恭吉(1892-1915)と91歳まで生きた天才パブロ・ピカソ(1881-1973)では、同じ若描きの作品といっても、その画業における位置はまったく異なります。しかし、才能に恵まれた芸術家は青春時代にキラッと輝く作品を残しています。ここでは青年時代の作品が持つ意味について考えてみたいと思います。

4月29日(金)から企画展「ポップ?ポップ!ポップ♡ コレクションに見るポップなアートの50年」を開催します。(6月19日まで)。アンディ・ウーホルに代表される1960年代のアメリカのポップアートにはじまり今日の村上隆、奈良美智、森村泰昌に至る「芸術」の驚くべき変容を、心ゆくまでお楽しみください。

皆様のお越しをお待ちしています。

2011年4月24日

 

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