MOMAWコレクション 版画と美術散歩 第2期 ピカソ《泣く女》と―凹版の小道

会期:2026年09月12日(土)~2026年10月18日(日)

MOMAWコレクション 版画と美術散歩 第2期 ピカソ《泣く女》と―凹版の小道 会場風景

 版画は当館にとって重要なコレクションの柱です。しかし、素材が光に弱いために長期間の展示はできず「あの作品にはいつ会えるのだろう」と待ってくださる方も少なくありません。今年度はまず、コレクションの中でも「名品」を順に出品する計画を立て、その作品から発展する展示を試みます。第2期は、当館所蔵のピカソ《泣く女》を出発点に、西洋の凹版表現が日本にどのようにもたらされ、受け入れられ、深化していったかをたどります。

 凹版とは、版に刻まれた溝にインクを詰め、紙に写し取る版画技法のひとつです。ドライポイント、エングレーヴィング、エッチング、アクアチント、メゾチントなどが代表的な手法で、硬質な金属の版に刻まれた線や点により、紙の上に浮かび上がる独特の表情を生み出します。ヨーロッパでは15世紀頃から銅版画が発展し、当初は絵画や図像の複製を担いましたが、やがて美術家自身による芸術表現へと変わっていきました。

 明治おわりの1910(明治43)年に創刊された文芸美術雑誌『白樺』などによる西洋美術の紹介を背景に、日本でも凹版への関心が高まります。大正期に入ると、寺崎武男や間部時雄ら、ヨーロッパへ渡り現地で学んだ美術家たちが凹版技法を国内に広めました。1918(大正7)年には日本創作版画協会が結成され、翌年には第1回展を開催し、作品発表の場も増えていきます。そして、1931(昭和6)年には西田武雄が日本エッチング研究所を設立し、国内でも技法を学び、研究し、制作する環境が整えられていきました。

 フランスに渡りさまざまな凹版表現を追究した長谷川潔は、17世紀に発明されたマニエール・ノワール(一般にメゾチントと呼ばれる技法)を独自に発展させ、深い精神性を湛えた作品によって20世紀を代表する銅版画家のひとりとなりました。戦後、浜口陽三、駒井哲郎、浜田知明は、それぞれ黒から浮かび上がる色彩、夢幻の詩情、社会や人間へのまなざしを通して凹版の可能性を広げ、1950年代以降に世界各地で開催された国際版画ビエンナーレ展を舞台に国際的な評価を得ることになります。

 西洋から伝えられた凹版技法が、日本でどのように受け取られ、学ばれ、独自の表現へと展開していったか、その歩みを見つめ直す機会となれば幸いです。


MOMAWコレクション 版画と美術散歩  8月4日(火)~2027年1月11日(月・祝)
各会期
1期:ムンク《病める子》と—平版の小道      8月4日(火)〜9月6日(日)  終了
2期:ピカソ《泣く女》と—凹版の小道       9月12日(土)〜10月18日(日)
3期:マティス『ジャズ』と—孔版の小道      10月24日(土)〜11月29日(日)
4期:カンディンスキー『響き』と—凸版の小道   12月5日~2027年1月11日(月・祝)

展覧会情報

会場 和歌山県立近代美術館 1階展示室
会期 2026年09月12日(土)~2026年10月18日(日)
開館時間 9時30分〜17時(入場は16時30分まで)
休館日 月曜日(ただし9月21日、10月12日をのぞく)、9月24日(木)、10月13日(火)
観覧料 一般400(300)円、大学生250(200)円
*( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方は無料
*9月26日(毎月第4土曜日)は、「紀陽文化財団の日」として大学生無料
*10月4日(毎月第1日曜日)は無料観覧日
*同時期に開催の「なつやすみの美術館16 もしも“美術” がなかったら」「鈴木崇 もののをかし」チケットで本展観覧可能
主催 和歌山県立近代美術館

関連事業

▶担当学芸員によるレクチャー
日 時:9月20日(日)、10月4日(日) 各日14時から1時間程度、会場にて

 

同時開催

なつやすみの美術館16 もしも“美術” がなかったら
 7月11日(土)〜9月27日(日)

▶鈴木崇 もののをかし
 10月14日(水)〜2027年2月11日(木・祝)

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