会期:2026年10月24日(土)~2026年11月29日(日)
アンリ・マティス 『ジャズ』より《イカロス》1947年 当館蔵
版画は当館にとって重要なコレクションの柱です。しかし、素材が光に弱いために長期間の展示はできず「あの作品にはいつ会えるのだろう」と待ってくださる方も少なくありません。今年度はまず、「版画と美術散歩」として4期に分けて「名品」を順に出品する計画を立て、その作品から発展する展示を試みます。第3期は、アンリ・マティスの版画集『ジャズ』を道案内として、「孔版(こうはん)」による作品の世界をご覧いただきたいと思います。
『ジャズ』は孔版(ステンシル)による作品です。孔版は、版にあけた孔(あな)からインクを通して刷る技法で、染織技術から発展しました。マティスは1930年代の大壁画《ダンス》制作の時に構図を検討するために切り紙絵を始め、その晩年には重要な制作方法とするようになりました。彼は、孔版によって、切り紙絵の「はさみによるデッサン」と、絵具を混ぜて作った色の表現ができるかを、この版画集で実験しました。
第二次世界大戦後、1951(昭和26)年にサンフランシスコ講和条約が日本と連合国の間で結ばれ、日本は主権を回復します。国際的な文化交流が始まり、海外の同時代美術を紹介する展覧会も次々に開催されました。なかでも版画に影響を与えた展覧会として、マティス展(1951年)、ピカソ展(1951年)、ブラック展(1952年)が挙げられます。これらの展覧会では、パントル・グラビュール「画家にして版画家」であった彼らの仕事によって、版画が画家の重要な仕事として紹介され、創造的な価値を改めて示しました。『ジャズ』も、そのマティス展で紹介された作品です。
孔版の中で、近代日本でとくに発達した技法が謄写版(とうしゃばん)でした。エジソンの発明をもとに改良された謄写版は、コピー機のように手軽に印刷物を作れる事務用品として、明治以降、官庁や会社、学校などに普及し「ガリ版」と呼ばれて親しまれました。そして、謄写版に出会った青年たちが、同時代の一般的な印刷術をしのぐ水準まで、その質を高めていく動きが始まっていました。『ジャズ』は、彼らをさらに創造的な制作に向かわせるきっかけとなりました。
同じく孔版の一種であるシルクスクリーンも、戦後普及した技法です。もとは看板の制作に使われていましたが、版の布目を通してインクを押しだし、刷る方法です。アメリカの進駐軍がこれによってポスターなどを作り、その印刷工場で学んだ日本人が普及させようと試みました。少部数の鮮やかな印刷物を得意とする孔版印刷工房では、デザイナーたちが制作し、展覧会へも出品したことで版画の技法として定着していきました。さまざまなきっかけから生まれ、広がった孔版画の多様なありかたをご覧ください。
MOMAWコレクション 版画と美術散歩 8月4日(火)~2027年1月11日(月・祝)
各会期
1期:ムンク《病める子》と—平版の小道 8月4日(火)〜9月6日(日) 終了
2期:ピカソ《泣く女》と—凹版の小道 9月12日(土)〜10月18日(日) 終了
3期:マティス『ジャズ』と—孔版の小道 10月24日(土)〜11月29日(日)
4期:カンディンスキー『響き』と—凸版の小道 12月5日~2027年1月11日(月・祝)
アンリ・マティス 『ジャズ』より《ナイフ投げの男》1947年 当館蔵
福井良之助《静物》不詳 当館蔵
福井良之助《小さな世界》1957年 当館蔵
村井正誠《母と子》1956年 当館蔵
村井正誠《いもむし》1973年 当館蔵
清水武次郎《少女》1948年 当館蔵
清水武次郎《考える鳥》1959年 当館蔵
若山八十氏《風》1975年 当館蔵
若山八十氏《妖》1963年 当館蔵
展覧会情報
| 会場 | 和歌山県立近代美術館 1階展示室 |
|---|---|
| 会期 | 2026年10月24日(土)~2026年11月29日(日) |
| 開館時間 | 9時30分〜17時(入場は16時30分まで) |
| 休館日 | 月曜日(祝休日の11月23日は開館)、11月24日(火) |
| 観覧料 | 一般400(300)円、大学生250(200)円 *( )内は20 名以上の団体料金 *高校生以下、65 歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方は無料( 障害者の方の介護者の方も無料になる場合があります) *11月14日(土)、15日(日)は「関西文化の日」として無料 *11月22日(日)は「和歌山県ふるさと誕生日」として無料 *10月24日、11月28日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料 *本展チケットで「MOMAWコレクション 絵画と彫刻」も観覧可能 *同時期に開催の「鈴木崇 もののをかし」チケットで本展観覧可能 |
| 主催 | 和歌山県立近代美術館 |
関連事業
▶担当学芸員によるレクチャー
日時:11月7日(土)、11月21日(土) 各日14時から1時間程度、会場にて
タグ:関西文化の日, コレクション展, 和歌山県立近代美術館, momaw, 和歌山県ふるさと誕生日, マティス
