会期:2026年08月04日(火)~2026年09月06日(日)
エドヴァルト・ムンク《 病める子》
1896年 当館蔵
版画は当館にとって重要なコレクションの柱です。しかし、素材が光に弱いために長期間の展示はできず「あの作品にはいつ会えるのだろう」と待ってくださる方も少なくありません。今年度はまず、コレクションの中でも「名品」を順に出品する計画を立て、その作品から発展する展示を試みます。第1期は、《叫び》(1893年)でよく知られるエドヴァルト・ムンクの《病める子》を道案内に、美術の深い森を少しずつ散歩するように、「平版」で作られた作品の世界をご覧いただきたいと思います。
版画は凸版、凹版、孔版、平版に大きく分けられ、《病める子》は平版の一種であるリトグラフ(石版)で作られました。ほかの版式では、彫るなどして版に凹凸を作り、あるいは版に孔をあけて原版としますが、リトグラフは版面が平らなままで水と油がはじきあう性質を利用して版を作ります。「平らな版」というと不思議にも感じられますが、意外と身近なところにあって、現在一般的な印刷に使われているオフセットもリトグラフから発展した技法です。
リトグラフは、18世紀終わりにミュンヘンでアロイス・ゼネフェルダーが発明し、1798年頃に「化学的印刷術」として完成されてヨーロッパに普及しました。版の材料として天然の石灰石を使ったため、ギリシア語で石を指す「リトス lithos」による版画、リトグラフと呼ばれるようになりました。
はじめは楽譜や地図などの実用的な印刷に使われましたが、19世紀には画家たちがこの技術によって、版画作品を制作するようになりました。版画の技法のなかでもリトグラフの画期的なところは、版に描かれた痕跡を余さず製版し、印刷できることでした。彼らは製版に使う「リトクレヨン」や、ペンや筆につけた「解き墨」を使い、手描きの繊細で自由なタッチや、水彩画のように、やわらかなにじみなどによる豊かな表現を追求していました。また、優れた製版、印刷の技術を持つ版画工房との共同作業も大きな実りをもたらしました。
日本にリトグラフ印刷機がもたらされたのは、江戸時代、1860(安政7・万延元)年のことでした。プロイセンの使節が石版印刷機一式を幕府に贈ったのです。そして、明治時代にはヨーロッパやアメリカから指導者が迎えられて、リトグラフによる様々な実用印刷物が制作されて普及し、そのなかから美術作品としての版画も生まれました。その後、美術学校などでも教えられるようになると、国内あるいは国際的な展覧会でも活躍する石版画家たちが現れます。本展では、ムンクの《病める子》から、日本で創作版画としての石版画の世界を創った織田一磨の連作、現代の作品まで、平版の歴史とともにその魅力をお伝えします。
MOMAWコレクション 版画と美術散歩 8月4日(火)~2027年1月11日(月・祝)
各会期
1期:ムンク《病める子》と—平版の小道 8月4日(火)〜9月6日(日)
2期:ピカソ《泣く女》と—凹版の小道 9月12日(土)〜10月18日(日)
3期:マティス『ジャズ』と—孔版の小道 10月24日(土)〜11月29日(日)
4期:カンディンスキー『響き』と—凸版の小道 12月5日~2027年1月11日(月・祝)
ワルワーラ・ブブノワ《谷間への道》 制作年不詳 当館蔵
エドヴァルト・ムンク 《骸骨の腕のある自画像》
1895年 当館蔵
石井柏亭《休業》『方寸』2-4挿画 1908年 当館蔵
織田一磨《「東京風景」上野廣小路》 1916年 当館蔵
織田一磨《「大阪風景」道頓堀》 1917年 当館蔵
硲伊之助《朝顔》1935年 当館蔵
織田一磨《深林》1927年 当館蔵
硲伊之助《大きなパルミエ》1935年 当館蔵
展覧会情報
| 会場 | 和歌山県立近代美術館 1階展示室 |
|---|---|
| 会期 | 2026年08月04日(火)~2026年09月06日(日) |
| 開館時間 | 9時30分〜17時(入場は16時30分まで) |
| 休館日 | 月曜日 |
| 観覧料 | 一般400(300)円、大学生250(200)円 *( )内は20名以上の団体料金 *高校生以下、65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方は無料 *8月22日(毎月第4土曜日)は、「紀陽文化財団の日」として大学生無料 *9月6日(毎月第1日曜日)は無料観覧日 *同時期に開催の「なつやすみの美術館16 もしも“美術” がなかったら」チケットで本展観覧可能 |
| 主催 | 和歌山県立近代美術館 |
関連事業
▶担当学芸員によるレクチャー
日 時:8月22日(土) 、9月5日(土) 各日14時〜 1時間程度
